奨学金とは、経済的に苦しい学生が、大学や短大、大学院などへ進学するために利用する制度のことです。
奨学金には返済不要の給付型もありますが、貸与型よりも選考が厳しく、貸与型を利用している人のほうが割合は高い傾向にあります。
奨学金の返済をしている人のなかには、収入が減るなどして生活費やその他の支出負担が増え、返済が難しくなってきている人もいるのではないでしょうか。
しかし、奨学金も一般的な借入金と同様に、返済が遅延すると今後の生活に影響するさまざまなリスクが発生します。
そのため、支払いを遅延させない適切な対策をとることが必要です。
この記事では、奨学金が払えないときに起こりうるリスクや、返済が難しいときの支援制度・対処法について詳しく解説します。
あらためて奨学金とはどのような制度?
まず、奨学金制度の内容や、返済できないときにとるべき行動について見ていきましょう。
◇奨学金は返済が必要な貸付金
奨学金とは、大学・短期大学・大学院などで学びたい人を対象に進学費用を貸与・給付する制度で、経済的に困窮している学生が進学の際に利用できます。
奨学金で特に知られているのは、独立行政法人日本学生支援機構(以下、日本学生支援機構)の奨学金制度でしょう。
日本学生支援機構の奨学金制度には、一定の成績を収めた学生などに対して授業料を給付する返済不要の給付奨学金と、返済が必要な貸与奨学金があります。
貸与奨学金は以前から存在していた制度ですが、給付奨学金は2017年から新設された制度のため、一般的に奨学金というと貸与奨学金を指すことが多いでしょう。
貸与奨学金にも、無利子の第一種奨学金と、有利子の第二種奨学金という2種類があります。
2つの奨学金は利子が付くか付かないかの違いだけで、どちらの場合も返済が必要です。
また、第一種奨学金と第二種奨学金は、併用して借り入れすることもできます。
◇奨学金を払えないときは日本学生支援機構に連絡する
日本学生支援機構の奨学金を利用している場合、奨学金が支払えないとわかったら、できるだけ早めに日本学生支援機構に連絡することが必要です。
日本学生支援機構以外の奨学金制度を利用している場合には、利用している奨学金制度の運営元に連絡しましょう。
奨学金といっても、一般的な貸付金と同じく、無断で滞納してしまうとさまざまなリスクが発生します。
また、コロナ禍で収入が激減し、奨学金を返済したくてもできなくなってしまった人も少なくないでしょう。
一定期間返済を遅延してしまうと、延滞金が発生したり、信用情報に傷が付いたりするほか、連帯保証人に督促がいくこともあります。
返済が難しくなった場合には、遅延する前に必ず本人から日本学生支援機構に連絡することが大切です。
奨学金が払えないことで起こる4つのリスク
それでは、奨学金の支払いが遅れてしまうと、具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか。
返済の遅延により発生する、おもなリスクを4つ解説します。
◇延滞金が発生する
奨学金の支払いが遅延すると、遅延した翌日から延滞金が発生します。
延滞金は、本来返済すべき金額に、延滞した日数と設定された割合もとに算出されて請求される仕組みです。
なお、延滞金の算出の際に利用される割合は、奨学金の採用時期または貸与終了時期によって異なります。
例えば、2005年4月以降に第一種・第二種奨学金を併用して借り入れしている人の場合、返済を遅延すると各奨学金の割賦金に対して年3%の延滞金が発生します。
また、保証機関が本人に代わって代位弁済したときは、保証機関から代位弁済した金額を一括請求されることになるでしょう。
代位弁済分の返済が遅延すると、年10%の遅延損害金が発生するため注意が必要です。
◇信用情報に傷がついてローンが組めなくなる
奨学金の返還開始から6ヵ月経過したあと、延滞日数が3ヵ月以上となった場合、遅延情報が個人信用情報機関に登録されます。
個人信用情報機関とは、クレジットカードやキャッシング、ローンなどの借り入れに関する契約情報(個人信用情報)を管理している機関です。
銀行をはじめとする一般的な金融機関は、キャッシングやローンなどの契約を結ぶ前に、必ず個人信用情報機関に登録されている顧客の信用情報を確認しています。
個人信用情報機関に遅延情報が登録されてブラックリスト入りすると、たとえ奨学金を完済したとしても、滞納解消から最低5年間は保存されてしまうため注意が必要です。
信用情報機関に記録が残っている間は、クレジットカードの新規申し込みや住宅ローン、カーローンなどの審査に通りにくくなってしまいます。
◇借入額の一括返済を求められる
奨学金の支払いを遅延し続けると、借入額を一括で返済するよう求められ、日本学生支援機構が委託している債権回収会社から督促の電話がくることがあります。
督促の連絡は本人だけでなく、連帯保証人などにも行なわれるため、遅延している事実を家族に知られることになるでしょう。
督促に応じず返済を遅延し続けると、返済期日前の未済額も含めて一括返済を求められます。
通常、債務者には「決められた期限までは返済をしなくて良い」という、期限の利益が保証されているため、一括で請求されることはありません。
しかし、たび重なる督促にも応じない場合、債務者は期限の利益を喪失するため、債権者は一括返済を請求できるようになります。
仮に、保証機関による代位弁済が行なわれた場合には、保証機関から弁済額を一括請求されます。
◇財産を差し押さえられる
請求に一切応じない場合には裁判所への支払督促申立が行なわれ、それでもなお支払わなければ、強制執行が行なわれて財産を差し押さえられることになります。
差し押さえの対象となるのは、債権・不動産・現金・宝石・車などです。
債権には、毎月の給与も含まれるので、請求額をすべて払い終えるまでは差し押さえから逃れることはできません。
また、給与が差し押さえられる場合、会社にも差し押さえの連絡が裁判所など入るため、会社にも事情が知られることになるでしょう。
奨学金を払えないときの支援制度3つ
日本学生支援機構では、奨学金の返済が困難な人への救済措置として、支援制度を設けています。
支援制度の内容を具体的に説明します。
◇返還免除制度
返還免除制度とは、奨学金を借り入れた本人が死亡または心身の障害による労働力の喪失で返済不可能になった場合に、返還未済分の全額または一部を免除できる制度です。
どちらの場合も、奨学金返還免除願を日本学生支援機構に提出し、申請内容が返還免除に該当すると判断されれば、返済金の支払いが免除されます。
心身の障害による返還免除を申請するには、奨学金が返済できない状態を証明する書類と主治医の診断書が必要です。
ただし、奨学金の貸与中や在学中には、心身の障害による返還免除の申請はできない点に注意しましょう。
当然ながら、本人が存命中で心身の障害がない場合も、この制度を利用することはできません。
◇返還期限猶予制度
返還期限猶予制度は、経済的な理由や災害・傷病などによって返済が困難になったときに、返済期限を一定期間延ばせる制度です。
返還期限は通算10年まで延長できますが、災害や傷病、産前・産後の休業および育休など、返済困難な理由によっては10年の制限がないケースもあります。
返還期限猶予制制度を受ける場合、給与所得者なら税込年収300万円以下、給与所得者以外なら所得200万円以下と、収入基準を満たしていなければなりません。
また、この制度は返還を一定期間延期するもので、返済額の減免や利子が免除されるわけではありません。
そのため、未返済分についてはすべて支払う必要があります。
◇減額返還制度
減額返還制度は、毎月の返済額を減額できる制度です。
減額返還制度は、さまざまな理由で経済的に返済が困難になったものの、割賦金を減額すれば返済できる人を対象としています。
返済額を減額できる期間は、一度の申請につき12ヵ月間で、最長15年まで延長可能です。
ただし、返済期間は延長されても、返済金の総支払額は変わりません。
この制度は毎月の返済負担を減らすためのもので、返済予定の総額を減らすものではない点に注意しましょう。
また、適用条件として、年間の収入金額が325万円以下、給与以外の所得では年間所得金額が225万円以下と定められています。
奨学金の支援制度が使えないときの対処法4つ
奨学金が支払えないときの支援制度には、満たさなければならない要件があるため、利用できないという人もいるでしょう。
そのような場合の対処法を4つ紹介します。
◇家族や親族に借りる
家族や親族に、奨学金の返済が難しいと正直に説明して、返済金を援助してもらう方法があります。
奨学金は、本来借り入れした学生本人が返済するべきものです。
しかし、さまざまな理由によって支払いが困難になったときは1人で背負い込まず、家族に相談したほうがよいでしょう。
むしろ、滞納によるリスクのほうが大きいため、できれば援助してもらうことをおすすめします。
ただし、毎月借りるわけにはいかないため、一時的にはしのげても根本的な解決にはなりません。
未返済分をどう返済していくか、今後の返済プランを見直す必要があるでしょう。
◇副業やアルバイトで稼ぐ
毎月の収入が足りず返済が困難なのであれば、副業やアルバイトで返済額分を稼ぐ方法もあります。
近年は副業が盛んになり、在宅でもできる副業バイトも増えてきました。
空いている時間を活用して働ける仕事があれば、足りない分の収入を稼げるでしょう。
日雇いのアルバイトなら、1ヵ月分の返済額を短期間で稼ぐことも可能です。
とはいえ、会社員の場合、就業規則で副業を禁止されていることがあります。
また、日雇いといっても、給料が当日支払われるわけではありません。
アルバイトを始めるタイミングによっては、給料の支払日が返済日に間に合わないこともあるので注意が必要です。
◇フリーローンやおまとめローンを一時的に利用する
金融機関のフリーローンやおまとめローンを利用して、返済する方法もあります。
フリーローンやおまとめローンは、金融機関やカード会社などのカードローンに比べて金利が低めに設定されているのが特徴です。
使用用途に制限がなく、奨学金の返済にも利用できます。
利用限度額が決まっているので、余計に借り入れてしまう心配がなく、毎月の返済額に足りない分だけを借り入れることも可能です。
また、第一種奨学金と第二種奨学金を併用したといった理由で返済が複数あるときは、おまとめローンで一括支払いする方法もあります。
初めてローンを利用する人には、無利息サービスを提供している金融機関もあります。
例えば、「いつも」のフリーローンなら、初めて契約する方は最大60日間利息0円で利用することが可能です。
パソコンやスマートフォンから24時間いつでも申し込めるので、店舗に足を運ぶ必要がありません。
◇債務整理する
どうしても返済できないときは、債務整理という手段も考えられるでしょう。
債務整理とは、借入金の返済が困難になったときに行なう法的な制度です。
債務整理には、任意整理・個人再生・自己破産などの種類があります。
任意整理と個人再生は、どちらも借入金を減額できる手続きですが、返済額がゼロになるわけではありません。
自己破産では返済義務がなくなっても、財産の一部を処分されたり職種や資格が制限されたりといったデメリットがあります。
また、どの方法をとっても、信用情報に傷が付くことは避けられません。
クレジットカードを作れない・ローンを利用できない・携帯電話端末の分割払いができない、といったデメリットがあることも念頭に置いておきましょう。
まとめ
奨学金が支払えないとわかったときは、できるだけ早急に奨学金制度の運営元に連絡しましょう。
奨学金の返済が遅延すると、さまざまなデメリットやリスクが発生するため、今回紹介した対処法を参考に対策をとることをおすすめします。
金融機関のフリーローンを利用した返済をお考えなら、「いつも」のフリーローンを利用してはいかがでしょうか。
使用用途に制限がなく、奨学金の返済にも利用可能です。
複数のローンがあるときは、おまとめローンで一本化すれば、毎月の返済額を軽減できるケースもあります。
フリーローン、おまとめローンともに、24時間365日いつでもWebからお申し込みいただけます。
Web申し込みなら、最短45分での融資も可能ですので、ぜひお気軽に「いつも」にお問い合わせください。
おまとめローンの定義
① 借換えの対象となる債務は、「貸金業者(みなし貸金業者を含む)」からの借入債務であること(銀行、クレジットカードのショッピング等は対象外)
② 従前の債務から、毎月の「返済額」及び「金利の負担」が軽減されること
③ 返済方法について、約定に基づく返済により段階的に残高を減らしていくこと
名前:金子 賢司(かねこ・けんじ)
所有資格:CFP住宅ローンアドバイザー/生命保険協会認定FP/損保プランナー
おもなキャリア:東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務めるなか、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強をはじめる。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。