賃貸物件を解約する際、退去費用が発生します。
生活状況によって部屋の内装などが大きく変化している場合、高額な請求がされる場合もあり、退去費用が支払えないトラブルは少なくありません。
退去費用の滞納期間が長期化すると、裁判に発展するケースもあります。
貸主が支払うべき項目が請求額に含まれてしまっている可能性もあるため、請求内容が妥当性のあるものなのかを確認する必要があるでしょう。
この記事では、退去費用の支払わなかった場合の影響、高額請求されるケースなどとともに、退去費用を用意する手段についても解説します。
退去費用が払えないと一体どうなる?
賃貸物件を退去するときは入居者が、借りる当初の状態に「原状回復」をさせる義務があります。
退去時の状態によっては、敷金内では収まらず高額な追加料金が発生するケースもあるでしょう。
退去費用が支払えずに滞納してしまった場合、以下のような状況になります。
管理会社や保証会社から催促の連絡が入る
退去費用を支払わずに滞納した場合、管理会社や保証会社から連絡が入ります。
電話に出ないなど、連絡が取れない状況を作ってしまうと、電話連絡だけでなく自宅に直接訪問や、督促状が届くこともあります。
退去費用の支払いができないとわかっていれば、まずは貸主に連絡を取り、請求内容の見直しや支払期限の延長などの相談をすることが大切です。
連帯保証人に連絡が入る
管理会社や保証会社は、契約者本人と連絡が取れない場合、連帯保証人や緊急連絡先へ連絡します。
この時点で家族にも間違いなく伝わります。
退去費用の督促を無視してしまうと、家族に心配をかけるだけでなく、契約に関わるすべての人に迷惑がかかるため、早期解決に向けた行動が大切です。
訴訟に発展するケースも
滞納期間が長期化すると、最悪の場合、管理会社から訴えられる恐れもあります。
国民生活センターによると、「賃貸住宅の敷金・原状回復のトラブル」は年間約1万件も発生しています。
金銭が絡む問題であり、対処方法によっては大きなトラブルに発展する可能性もあるため、注意が必要です。
また、訴訟に発展した場合は裁判で争うことになり、個人間では解決できなくなるデメリットもあります。
「退去費用の金額に納得できない」「お金が用意できない」など理由がある場合は、問題が大きくなる前へ管理会社と直接交渉するとよいでしょう。
高額な退去費用が請求されるケースとは?
退去費用が高額となってしまうケースは、フローリングや壁紙の全面張替えをするなどの大がかりな修繕が必要な場合が挙げられます。
以下では具体的なケースを紹介します。
喫煙による壁紙の黄ばみ・ニオイ
入居中に室内で継続的にタバコを吸っていた場合、壁や天井に黄色いヤニ汚れが付着します。
タバコのニオイも染みついてしまうこともあり、退去時は壁紙の張替え費用とクリーニング代が必要となるケースがほとんどです。
タバコのヤニ汚れやニオイは落ちにくく、汚れの程度によっては壁面だけでなく、天井の壁紙まで全面張替えが必要なこともあります。
退去時の高額請求を避けるためには、タバコを吸うときは「部屋の外に出る」「換気扇の下で吸う」など、事前に対策を打っておくことが大切です。
ペットによる壁紙の剥がれ・ニオイ
入居中にペットを飼っていた場合、動物特有のニオイが部屋に染みついてしまい、室内の消臭が必要となるケースがあります。
ニオイだけでなく、ペットによるひっかき傷の修繕費も自己負担です。
ペットの行動は制限できないため、賃貸でペットを飼う場合は、退去費用が高額になることをあらかじめ認識しておきましょう。
床・壁紙に大きな傷や剥がれ
フローリングなどの床材を傷つけてしまうと、張替えが必要となり退去費用が高額となるケースがあります。
特に、退去する際に引越し業者を使わずに、個人で家具を移動させる場合は注意が必要です。
家具が重たいと床をひきずってしまうことや、壁にぶつける可能性もあり、大きな傷や剥がれが起こる場合があります。
トラブルが起こることを想定して、明らかに重みがある大きな家具を移動させる場合は、引越しのプロに依頼することも退去費用を抑える手段の一つです。
ただし、家具の重みで床がへこんでいるだけであれば、入居者負担とならない場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
退去費用で支払い義務がないものがある
退去費用には、入居者が負担しなくても良い項目もあります。
余計な請求がされていないか、内訳をよく確認しましょう。
ここからは、貸主側が負担する項目について解説します。
経年劣化による修繕費
年月が経つことが原因となる品質低下は、「貸主側」が負担します。
経年劣化による修繕費用が請求額に入っていた場合は、貸主側へ指摘すると減額される可能性があります。
請求内容に誤りがないか、しっかりとチェックしてください。
経年劣化に該当するものは、日光が原因の壁や床の変色、湿気によるゴムパッキンの劣化・ネジの錆・浴室やトイレの黄ばみなどが挙げられます。
通常損耗による修繕費
通常損耗も経年劣化と同様に、入居者の負担義務はありません。
通常摩耗は、日常生活を送るうえで生じた「物件の傷み」のことを指します。
一方で、故意・過失による傷や剥がれ、汚れは「特別損耗」と呼ばれ、基本的には入居者が負担します。
通常損耗に該当するものは、家具の重みによる床やカーペットのへこみ、冷蔵庫・テレビ裏の電気焼けによる壁紙の変色、画びょうをさした穴などです。
ガイドラインに基づいた支払い不要な項目
契約書に記載がなく判断がつかない項目は、国土交通省作成の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」(以下、ガイドライン)を参考にしてください。
ガイドラインに法的強制力はありません。
しかし、原状回復の根拠と基準を示しているため、退去時に役立つでしょう。
実際のケースをもとにQ&A形式で解説があり、入居者側・貸主側どちらが負担すべきなのか、判断がしやすくなっています。
以下では、ガイドラインに実際に掲載されている内容を紹介します。
Q8.賃貸借契約書に特に約定されていないのですが、退去にあたり、大家さんから、襖や障子、畳表を張替えるようにいわれています。
襖や障子、畳表は退去時に必ず賃借人が張替えなければいけないのでしょうか。
A.襖や障子、畳表の損耗が経年変化や通常使用によるものだけであれば、賃借人の負担で張替える必要はないと考えられます。
しかし、賃借人が毀損した場合には、賃借人の負担で張替えることになります。
引用:国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」
上記のように入居者が毀損していない、単純な経年劣化であれば、入居者側は支払う必要がないと判断が可能です。
退去費用の相場金額はどのくらい?
退去費用にはハウスクリーニング費用、原状回復費用の2種類が含まれます。
以下では、クリーニング費用の目安、修繕費用の目安を紹介します。
ハウスクリーニングの費用相場
「ハウスクリーニング」とは、専門業者がクリーニングを行なう際にかかる費用のことです。
部屋の状態によっては発生しないケースもあります。
一般的にクリーニング代の負担については、入居前に締結する契約書に明記されています。
契約書に入居者負担と記載がある場合は、退去時には支払い義務が発生するため、事前に契約書の内容を確認しておきましょう。
なお、ハウスクリーニング費用の大まかな目安は以下のとおりです。
- ワンルーム・1K:1万5,000円~3万円
- 1DK・1LDK:2万円~4万円
- 2DK・2LDK:3万円~5万円
- 3DK・3LDK:5万円~8万円
- 4DK・4LDK:7万円~
原状回復の費用相場
原状回復とは、入居時の状態に戻す作業のことです。
すべてを修繕し、新しくするという意味ではなく、入居前にチェックした部屋の状態と比較したうえで、経年劣化ではない汚れ・傷の修復を指します。
原状回復するための費用は、部屋の状態によって貸主と入居者の双方で分担して負担します。
「経年劣化や通常損耗」による汚れや傷のみであれば原則、入居者は原状回復にかかる金額を支払う必要はありません。
ただし、部屋の状態によっては、修繕が必要となる場合もあります。
以下では原状回復の費用負担目安を紹介するので、退去費用の参考にしてください。
壁紙張替えの費用相場は、約3万円~4万円です。
基本的に壁紙は全面張替えが必要なため、壁の面積によって価格が変動します。
タバコのヤニによる黄ばみが天井にも見受けられる場合は、天井分も加算されるため、想定よりも高く請求される可能性があります。
壁・ボードの取替えは、約3万円~6万円が相場です。
壁の内側のボードまで破損するほど傷が深い場合、高額な修繕費がかかることも考えられます。
フローリング張替え費用の目安は、1畳あたり約3万円~6万円です。
傷やへこみの補修費用は、施工範囲によって幅がありますが、約8,000円~6万円とされています。
畳の場合は、表面のみを張替える場合は1畳あたり約5,000円、すべて新調する場合は約1万円の費用負担が目安です。
畳を取替える場合は、新品での交換費用が上乗せになります。
傷がつかないよう、床にはカーペットを敷くなど工夫しておくことが大事です。
退去費用が支払えない場合はどうしたらいい?
退去費用が高額な請求だった場合でも、請求内容が妥当であれば支払いが必要です。
滞納をしてしまうと、訴訟に発展するケースも珍しくありません。
ここでは、退去費用が支払えない場合の対処方法を解説します。
退去費用額を交渉する
請求された退去費用が高額の場合、請求内訳をよく確認しましょう。
過剰請求や借主負担分(経年劣化・通常損耗)が上乗せされているケースがあるためです。
提示された金額を鵜吞みにせずに、ガイドラインを熟読し、余計な項目が請求されていないかチェックすることが大切です。
ガイドラインをもとに交渉をすれば、根拠が提示できるため、金額が下がる可能性が高くなります。
消費者ホットラインに相談する
正当な交渉を行なっているにもかかわらず、貸主が退去費用の減額などに応じない場合、消費者ホットラインに相談する方法も考えてみてください。
消費者ホットラインとは、全国各地の地方公共団体が設置する相談窓口のことです。
商品やサービスなど、さまざまな消費生活全般に関する相談ができます。
通話料はかかりますが、別途で相談料はかかりません。
消費生活におけるトラブルに幅広く対応しているため、的確なアドバイスが受けられるでしょう。
分割での支払いが可能か相談する
支払い内容に納得してはいるものの、すぐに現金が用意できない場合は、貸主へ分割支払いができるか相談してみてください。
本来であれば、退去費用は一括支払いが原則ですが、貸主に納得するような理由があれば分割払いに応じてもらえる可能性もあります。
毎月の支払える額、どの程度で支払いが完了できるかなど、支払い計画をしっかりと立てたうえで相談しましょう。
一時的にお金を借りる
退去費用を支払うお金がどうしても用意できない場合は、一時的に金融機関にお金を借りることも選択肢の一つです。
具体的な方法としては、フリーローンやキャッシングが挙げられます。
退去費用だけ用意したい場合は、借り入れが1回きりの「フリーローン」の利用がおすすめです。
フリーローンでは実店舗に行かなくとも、Web上で完結する仕組みを取り入れる金融機関が多くあります。
審査が通れば、即日現金が口座に振り込まれるため、手間をかけずにお金を借りられるでしょう。
フリーローンは必要な金額を一度借り入れすると、再審査の手続きを踏まないと、追加で借入ができない仕組みです。
連続での借り入れがすぐにできない反面、計画的に利用できることがメリットといえます。
退去費用や引越し費用、当面の生活費など、何度か借り入れが必要となる場合は、キャッシングを利用するとよいでしょう。
手持ちのクレジットカードにキャッシング利用枠がついていれば、クレジットカード会社提携の銀行ATMなどから、上限枠内で何度でも借り入れができます。
フリーローンやキャッシングは、使い道に制限がないため、退去費用に充てる目的であっても借入可能です。
滞納による大きなトラブルを避けるために、お金を一時的に借りることも選択肢に入れておくとよいでしょう。
ただし、借り入れした分は当然返済が必要なため、事前に返済計画を立てて、滞りなく返済するようにしてください。
まとめ
退去費用が高額で支払えないトラブルは決して少なくありません。
ただし、妥当性のある請求においては、入居者が支払う義務があります。
支払いが難しく、滞納を続けていると最悪の場合、訴えられてしまうこともあるため、慎重に対応する必要があるでしょう。
どうしても現金が用意できない場合は、一時的にお金を借りる選択肢もあります。
「いつも」であれば、スマートフォンで24時間申し込みが可能です。
最短30分で審査結果がわかり、審査が通ればすぐに指定の口座に振り込みができます。
退去費用の支払いに困っている場合は、ぜひ利用してみてください。
名前:金子 賢司(かねこ・けんじ)
所有資格:CFP住宅ローンアドバイザー/生命保険協会認定FP/損保プランナー
おもなキャリア:東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務めるなか、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強をはじめる。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。